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クリプト探偵ビトー EP.5 情報屋BAN爺

私はビトー。何の因果か、興信所では解決できないテクノロジー絡みのあらゆる相談を高額のBTC払いでのみ請け負うことから、人は私を「クリプト探偵」と呼ぶ。

我々クリプトに浸る者のコミュニティにも情報屋は存在する。その中でも私が懇意にする男が通称「クリプト情報屋のBAN爺」。

「ビトー兄貴、例の件、終わりましたぜ。」
「いつもすまないな。今回の報酬はSATOSHICARDトークンで良かったかな? あえて理由は聞かないが。」
「へい」

そして、その男の二つめの顔は、自称クリプトトレーダー「逆張りのPON太」。常に奇跡的に相場の逆に張り、神がかり的な損失を出すことからその名が付いた。実は、表向きはトレーダーと称しつつも、毎夜SNS上で悪徳コイン販売商法の悪事を白日の下にさらすのが日課なのだ。

「某自称ICO案件さん、クラウドファンディングと称して、週末は投資人数も合計金額も増えないなんて手動操作はお休み中ですか? クククク。」
「規約にクーリングオフなしなんて堂々と書きつつ、今日は投資人数が増えたにもかかわらず合計金額が減ってるなんて、マイナス投資家でもいるんですか? クククク」

突如、リビングルームに灯りが点り目が眩む。その原因に気がついたBAN爺はとっさにスマホのマルチタスクを切り替える。

「あ! パパ、また夜中にゲームしてたでしょ? もうしない約束でしょ?」
「あ、ごめんついつい…。課金はしてないからさ。」
「もぅ! また子どもが目を覚ましたらどうするのよ? さぁ、さっさと寝るわよ!」
「はい、ごめん…」

業界で悪徳コイン商法潰しのフィクサー(Fixer)ならぬゴクサー(Goxer)の異名を持つBAN爺も、3つめの顔は平凡な一児の父親なのだ。

twitterアプリを閉じながら、とぼとぼとベッドルームに向かうBAN爺のスマホに、突如謎のダイレクトメッセージが大量に届く。

「何だ? これはいったい?」

正義、すなわちそこには必ず悪という敵が存在する。そして、その身にも災いが降りかかるときが必ず来る。

そして数日後…

「逆張りPON太がtwitterから消えた?」
「PON太が垢BAN?」
「業者に刺されたんじゃね?」
「ハードフォークで別垢復活っしょ?」
「今回長すぎるよな?」

逆張りPON太と情報屋BAN爺の周りで、しばし空白の時が流れる。しかし、依頼なきコンタクトは取らないのが礼儀。

このまま3つめの本来の顔で生きていくことにしたのか、それとも危機が訪れたのか。今回は悪い予感しかしない。

世の中には、表で良い顔をして裏で悪事を働く者もいれば、表で弱い夫の顔を持ちつつも、裏で身を削りながら正義に徹する者もいるのだ。

続く。

前回:

クリプト探偵ビトー EP.4 論よりブロックチェーン

私はビトー。何の因果か、興信所では解決できないテクノロジー絡みのあらゆる相談を高額のBTC払いでのみ請け負うことから、人は私を「クリプト探偵」と呼ぶ。私の仕事はコイン商法被害者の相手ではない。時折、企...
by Takao Asayama 朝山貴生 2016-08-18 02:08

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最終更新日:2016-08-18 02:08

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