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クリプト探偵ビトー EP.1 BTC相続

私はビトー。何の因果か、興信所では解決できないテクノロジー絡みのあらゆる相談を高額のBTC払いでのみ請け負うことから、人は私を「クリプト探偵」と呼ぶ。

本日の依頼人は浦瀬美代子。都内在住の28歳。流行のフィンテック関連企業を経営していた父親が数ヶ月前にこの世を去り、彼女を含む5人が莫大な資産を相続することに。遺言では「最後には保を含めて仲良く」配分を決めろと言う。しかし複雑なのは、その「保」が、父親の若い妾が投げ出した5歳の男の子「たもつ」を指す。4人の実子には生前に暗号らしき文字列が手渡されたものの、幼児の保には何も残されていない。この数年は依頼人が母親代わりに保を育ててきたが、どうも現社長の長男と副社長である長女はその存在が気に入らないらしい。

「専門家に見せたところ、おそらくそれぞれの鍵がビットコイン?の鍵だと言う事で、多数決で遺産のBTC?が動かせるとかなんとか。私と一つ上の兄は、父の意見を尊重して5人で均等にと言っているのですが、上の兄と姉が全く聞く耳を持たないので3人揃わないのです…」と依頼人からの打診が先月。本日で既に3度目のメッセージである。

「浦瀬様、では再度聞きますが、お父様から保くんに託されたものは他には何も?」
「はい。既にお話ししました通りです。あとは意味のない詩もありましたがそれ以外は。」
「え? それは初耳ですね。どのような詩ですか?」
「もう、何百回も読みましたので暗記しています。異国の紫が追いかける光 螺旋の下方に平穏の足音…」
「ちょっと待って下さい。その先は言わないで。『の』や『が』などを除いた単語数は12以上ありますか?そうであれば、それが鍵となるフレーズ。私が全てを知ってはいけない。」
「え?えっと1、2、3…11です。しかも、そんなはずありません。長男はその可能性も全て調べたのです。屋敷の玄関に飾られていた父の紫の壺を大学研究室に分析させただけではなく、建築業者を呼んで螺旋階段まで解体させましたが何も出てこなかったのです。憤慨した兄は詩が書かれた紙を燃やしてしまいましたし、そんな映画みたいな話今さら信じられません。」
「そう言う鍵ではないんです。実はその唄自体が、ビットコインの秘密鍵となるのですよ。」
「え? でも先ほどビトー様は12単語以上と…」
「はい、12個目は、浦瀬様のお父様がおっしゃる通り、です。」
「最後には保を含めて…はっ…そういうことなのですね。ありがとうございます。これで兄と保と3つの鍵で、兄弟5人で仲良く均等に分けたいと思います。」

欲に眩んだ長男は、身近な最後の鍵が見えていなかったと言う事か。しかし、フィンテック企業の大社長たる者、BIP39を知らずに大金を逃すとは哀れなものだ。

続く…

クリプト探偵ビトー EP.2 コイン販売商法

私はビトー。何の因果か、興信所では解決できないテクノロジー絡みのあらゆる相談を高額のBTC払いでのみ請け負うことから、人は私を「クリプト探偵」と呼ぶ。コイン販売商法。すなわち価格が上がると謳い、代理店...
by Takao Asayama 朝山貴生 2016-08-15 16:19

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最終更新日:2016-08-15 17:04

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